Interview / クローズアップ東京人
Vol.4
日本お茶漬け協会会長
もちづき もちこさん
2025.9.10

Profile
もちづき もちこ
1996神奈川県横浜市生まれ。2018年3月法政大学卒業後、テレビ番組制作会社でAD業務に携わる。2019年5月、お茶漬けエッセイを発表する同人サークル「玉露花付き」を主宰。お茶漬けに関する同人書籍を次々に発行し、主にコミックマーケットに出展し販売する。2025年8月発行の「もちづきもちこのお茶漬けだーいすき!」は11冊目となる。TBSの「マツコの知らない世界=お茶漬けの世界=」(2024年7月2日放送)に出演するなど、メディア出演多数。食べたお茶漬けは1500食以上、インスタント茶漬けは約250種を完食。2025年1月「日本お茶漬け協会」を立ち上げ会長に就任。お茶漬けに関する様々な活動を行っている。
![]() |
お茶漬けの同人書籍(もちづきもちこ著) |
---|
小学4年生で目覚めて以来、お茶漬けに対する探求心は深まるばかり。「お茶漬けの人」として全国に認知されるよう、全力でお茶漬け行脚を続けていきます。
今回のゲストは、週7日お茶漬けを食べるというお茶漬けマニアのもちづきもちこさん。現在、日本お茶漬け協会会長として様々な角度からお茶漬を探求しているもちづきさんに、そのあふれる“お茶漬け愛”を語っていただきました。インタビュー後半で紹介している「もちづきさんが教えるホームメイドのお茶漬けレシピ」にも、皆さんぜひトライしてみてください。
❶ 父は、和洋中の様々な最高級料理を子どもたちに体験させてくれました。
── お茶漬けライターとして活躍されているもちづきさんですが、お茶漬けにのめりこむようになった何かきっかけのようなことはありますか。
もちづきもちこさん(以下、「もちづき」):はい。きっかけは、今でも鮮明に覚えています。小学4年生のある日に、家族が全員寝坊してしまい、映画『ホーム・アローン』の出発シーンのようにバタバタしていて、私も「早く行かなくちゃ」とあせっていたときに、母が「何も食べないとお腹すいちゃうから」と、パパッとお茶漬けを作って出してくれたんです。「永谷園」のインスタント茶漬けだったのですが、それが本当においしくて、あまりの衝撃でしばし固まって動けなかったくらいです。そのお茶漬けが強烈な印象となり、以後、朝ごはんに母にリクエストしたり、中・高校時代はバドミントン部の朝練前に必ず食べたり、就職してADとして働いていたときに夜食に食べたりと、お茶漬けが私の食生活に常にあるようになりました。
── お茶漬けマニア・もちづきもちこを育んだご実家の食育に、大変興味がわきます。もちづきさんは、子どものころ、どのような食環境で育ったのでしょうか。
もちづき:私の家は、父母と3歳下の妹の4人家族ですが、父が食に対して貪欲な人で、普段はなかなか手が出ない食べ物や料理を、必ず1回は子供たちに食べさせ経験させるという方針を持っていました。お祝い事の食事にはフグを食べに行ったり、割烹料亭で目の前でさばいた高級魚料理を食べたり、機会がある度に、普通の小学生ではしないような料理体験をさせてくれました。これを言うとお金持ちの家だと思われそうですが、そうではなく、父はいつも「これは、あたりまえの食事ではないんだよ」と念を押してました。純粋に子どもたちに、最高の料理を体験させたかったのだと思います。「このご馳走が気になるようなら、将来、自分のお金で食べれるようにがんばりなさい」というメッセージも込めていたのかもしれません。
母も、料理が大好きな人で、毎日、美味しい家庭料理を作って食べさせてくれました。料理の材料は、ほぼ目分量ですが、いつも手早く美味しく作れるのには感心します。今、自分は一人暮らしですが、料理は好きで、お茶漬け以外にも、いろいろ作ります。母直伝の「出汁巻き玉子」は、自分でもかなりいけていると思います(笑)。
── 2025年1月に、日本お茶漬け協会を立ち上げられました。どんな活動をする会なのでしょうか。また会員になるにはどうしたらよいのでしょうか。
もちづき:正式メンバーは、まだ、私と、私の本のデザインを担当しているデザイナーの石田ダダさんの2人だけなのですが、会員を募集しており、現在、会員数は30人ほどです。入会費500円で年会費・更新費はなく、協会のHPか入会するか、またはイベント出展時に直接入会できます。入会者にはお茶漬けをデザインした会員バッジが渡されます。メルマガ配信、イベント出展時に会員への特典プレゼント、会員への返礼品を予定しています。新作お茶漬け発表会、お茶漬けクッキングなど、お茶漬けを探求するためのオフラインイベントもいろいろ計画中です。お茶漬けを愛する人ならば老若男女国籍問わず大歓迎ですので、興味のある方はぜひHPをのぞきに来てください。

日本お茶漬け協会の会員バッジ。梅干しが乗ったお茶漬けをデザイン。
❷ お茶漬けを食べると安心するのは、日本人に流れる血のようなもの。
── お茶漬けは日本の伝統食。その歴史は長く、平安時代にさかのぼるそうですね。お茶漬け文化はどのような歴史をたどって今に至るのでしょうか。
もちづき:平安時代にあった「水飯」「湯漬け」がお茶漬けの始まりだといわれています。水飯は水をかけたご飯、湯漬けは湯をかけたご飯で、それにいくらかの塩気を足して食べていたようです。その後、室町時代に日本の茶道が確立され、ご飯にお茶をかけるお茶漬けが始まりましたが、一部のお金持ちだけのものでした。江戸時代に、京都から煎茶文化が江戸に伝わり、初めてお茶漬けが庶民に広まりました。江戸時代にはあちこちにお茶漬け屋があり、どの料理屋にも、お茶漬けメニューが用意されていました。「お茶漬けの味で、店の位がわかる」ともいわれていたそうです。現代のお茶漬け文化が定着したのは、「永谷園」が、簡単にできるインスタントお茶漬けを出して以降です。
そして最近のお茶漬けの主流は、それ1食だけで昼食になるような贅沢な出汁茶漬けです。「ご飯が残っているからお茶漬けにでもしよう」という時代は終わりつつあります。今や、全国各地に、土地の物を美味しく食べる手段として独自の出汁茶漬けを考案し提供している店があります。あの店のあの出汁茶漬けを食べに行くという、外食メニューの選択肢の一つとなってきました。
── 日本人は、なぜお茶漬けを、こんなにも長い間継承してこれたのでしょうか?
もちづき: 日本人には、お茶漬けを食べたときにホッとする人が多いと思います。「あー、これこれ。この味だわ!」と納得して、笑顔になる。まさに空いていたスペースにピースがピッタリはまるような感覚。これは、1000年以上もの間、日本人が継承してきたお茶漬けならではの安心感だと思います。日本人には、お茶漬けに癒される、癒されたいという伝統の血が流れているんでしょうね。私の場合は、小学4年生の時にお茶漬けに目覚めて以来、お茶漬けに対する探求心は深まるばかり、今や“愛”の領域です(笑)。

インタビュー後に、お茶漬けの作り方を披露。作り方はインタビュー後半で!
── もちづきさんは、お茶漬けを週7日連続で食べることもあるそうですね。具体的にはどんな食べ方をされているのでしょうか。
もちづき: 1日3食でいえば、やはり朝に食べることが圧倒的に多いです。忙しい朝時間に、手軽においしいものを食べたいというわがままをかなえてくれるからです。日常のお茶漬けは、やはり、永谷園のインスタント茶漬けが多いですが、「永谷園の海苔味のインスタント茶漬けを、冷やし茶漬けにして、シーチキンで作ったツナマヨをのせてみる」など、美味しくするための一工夫も加えています。
お茶漬けは、いろいろな食べ方ができるので、どう食べたいかによって、様々な選択肢があります。たとえば子どもなら、人気キャラクター “ちいかわ”のかまぼこが入った「丸美屋 ちいかわ茶漬け」でしたら、パッケージがかわいくて塩分控えめなのでおすすめです。自分の好きなお茶とトッピングで作ったり、インスタント茶漬けを食べ比べてみたりしながら、要はそれぞれが自分好みのお茶漬けをみつければいいと思います。
ただ、私はお茶漬けマニアですが、お茶漬けを偏食しているわけではありません。お茶漬けだけで栄養を保つのは無理なので、野菜や肉の総菜をプラスして栄養バランスも考えて食べています。
※後半のインタビューでは、もちづきさんのお気に入りのお茶漬けや、お茶漬けレシピなど、読者の皆さんにすぐに役立つ実践的なお茶漬け情報満載です。次のページをご覧ください!
![]() |
インタビューと文
Wakako |
---|
「AKOMEYA TOKYO」の新作お茶漬け発表会で、ゲストとして登壇していたもちづきさんに初めて出会い、お茶漬けというニッチな食べ物をこれほどにも大きな熱量で探求している若い女性がいることに驚きました。今回のインタビューでは、知らなかったお茶漬けの世界を垣間見ることができました。最近、我が家の朝食には、もちづきさん直伝のお茶漬けがよく登場します。お茶漬けのマイブームが、しばらく続きそう!
最新のお散歩コース
![]() |
鶴見線の旅&生麦旧道歩き/神奈川県横浜 |
---|---|
![]() |
虎ノ門ヒルズを歩く/東京 |
![]() |
渋谷・青山(青渋)を歩く/東京 |
![]() |
東京国立博物館を巡る/東京 |
![]() |
麻布台ヒルズを歩く/東京。 |
![]() |
渋沢栄一ゆかりの王子へ/東京。 |
![]() |
神田神保町古書店街を歩く/東京。 |
![]() |
乗り物で行く山下公園/神奈川県横浜。 |
![]() |
横浜中華街/神奈川県横浜。 |
![]() |
雑司が谷・護国寺/東京。 |
最新の連載記事
[%category%]
[%title%]
[%article_date_notime_dot%] |
|