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Interview / クローズアップ東京人

Vol.3

チームラボ(teamLab)

工藤 岳(たかし)さん

取材日2024.3.22

Profile

工藤 岳(くどうたかし)

1977年、東京都茅場町で老舗茶舗を営む家に生まれる。地質学者である父が石油会社に勤めていた関係でアブダビに転勤となり、幼少時はアブダビ首長国で育つ。早稲田大学文学部哲学科卒業。大学時代に、チームラボ創業者・代表の猪子寿之氏と親交を深める。その後、大道芸のジャグリング(ポイ)の技を極め、大道芸人として、2001年からタイ、ネパール、シリアなどの国々を約6年間放浪する。2006年からはスウェーデンに移り、ゲーム雑誌の会社で編集に携わる。2010年に日本に帰国し、友人の猪子氏に誘われてチームラボ株式会社に参画し、現在に至る。グローバルに急成長を続けるチームラボを支えてきた。

新チームラボボーダレスのエントランス。

チームラボには営業部門がありません。口コミだけで広がり、世界各国から展示依頼が来ます。今後も、自分たちが美しいと思うアートを創り続けていきます。

今回のゲストは、アートの世界で今を時めくチームラボの工藤岳(たかし)さん。トレードマークは、大道芸人時代に始めたという辮髪。英語、アラビア語、スウェーデン語を話す国際人あり、世界を駆けるアート集団(art collective)チームラボを率いてきた工藤さんに、麻布台ヒルズの新チームラボボーダレスでお話を伺いました。

スタート時、誰もが失敗を予想しましたが、僕らは成功を信じていました。

── 地図のないミュージアム「チームラボボーダレス」が麻布台ヒルズに移転オープン〈2024年2月〉して約2カ月。来場者からの反応はいかがでしょうか。

工藤さん(以下、「工藤」): チケットの売れ行きでいうと、おかげさまで、現在はオープンから完売が続いている状態です。前回のお台場の「チームラボボーダレス」も体験していただいている方々に館内をご案内しましたが、多くの方々から「よりボーダレスになっていますね」「さらに進化していますね」という感想をいただいています。館内が少し暗いので、一般の来場者の顔はよく見えませんけれど(笑)、皆さんの様子からは、来館したことを喜んでいて、作品をとても楽しんでくださっていることが感じられます。

── お台場の「チームラボボーダレス」は、2019年の来館者数において、単一アート・グループとして世界で最も来館者が多い美術館として世界記録に認定され、豊洲の「チームラボプラネッツ」は、2023年「インバウンド人気観光地ランキング」で日本一になりました。スタート時に、このような大きな成功は想定されていましたか?

工藤: 2018年に、お台場と豊洲にこれら2つのミュージアムをオープンしたときに、あらゆる人が「デジタルアートのミュージアムなんて無理だろう、成功するはずがない」と予想しました。僕らも最初は少し怖かったですが、「笑う人は笑っていればいい。絶対に成功するぞ」と自分たちを信じて、チームで励ましながらスタートしました。

これまでの活動で、チームラボのターニングポイントが幾つかあります。まず、現代美術家の村上隆さんに、「世界で発表しなさい」とアドバイスをいただいて、2011年に台北のKaikai Kiki Galleryで、初めての個展を開催したことが、国際的なアートシーンへの始めてのデビューでした。2014年には、ニューヨークのペースギャラリー(Pace Gallery)がチームラボの作品展示を支援してくれるようになり、世界各地でチームラボのアート展が開催されていくようになりました。そして2018年に東京に開業した「チームラボボーダレス」「チームラボプラネッツ」は、僕らができることの幅を広げ、それまでやってきたことをつないで集大成させ、内外から大きな支持を得ることができました。そういう意味でこの2つ展示館は本当に特別な存在です。

チームラボボーダレスで作品に溶け込む工藤さん。

── 麻布台ヒルズに戻ってきた「新チームラボボーダレス」と、お台場の「チームラボボーダレス」との違いはどこにありますか?

工藤: 違いは、ほとんどないのですが、あえていえば「新チームラボボーダレス」は、さらに進化しているという点だと思います。進化というのは、作品が、どんどん増え続けているということです。通常の作品は物質ですから、限られた空間や部屋には、置ける点数は限られています。たとえば、3作品しか置けない部屋に、さらに作品を増やして置くと、部屋が満杯で入りきりません。しかし、デジタルテクノロジーを用いたアートは物質的ではないので、作品を増やすことができます。デジタル空間では、作品がひたすら部屋間を移動し、オーバーラップしていくので、1部屋の中に、5、6個の作品があったとしても成り立ちます。

通常の感覚では、「作品数が増えている」というと、「鑑賞スペースが増える」と思うかもしれませんが、デジタルテクノロジーによるアートの世界では、鑑賞スペースは同じでも、作品数はどんどん増やすことができるのです。現在、作品数は70以上で、今後も増え続けます。

── 「新チームラボボーダレス」は、お台場よりさらにボーダレスになっているといわれます。チームラボが目指す「ボーダレス」とはどのようなことをいうのでしょうか?

工藤: そもそも、なぜチームラボが「ボーダレスな世界」を作ろうとしたかといえば、僕らは最初から「連続している世界」が、最も美しいと思っていたからです(※チームラボのコンセプト参照)。それはつまり、自分と世界がつながっている、時間が連続しているということで、「境界線がない(ボーダレス)」という意味になります。さらにわかりやすく説明すると、「作品と作品がコミュニケーションを取り合いオーバーラップしていて、境界線がない」「鑑賞者は、作品の一部になることで作品との境界がなくなる」ということになります。しかし、言葉だけで理解するのは難しいので、実際にミュージアムへ来てボーダレスを体感すると、その意味を本当に理解していただけると思います。

※チームラボのコンセプト
チームラボは、アートによって、自分と世界との関係と新たな認識を模索したいと思っている。人は、認識するために世界を切り分けて、境界のある独立したものとして捉えてしまう。その認識の境界、そして、自分と世界との間にある境界、時間の連続性に対する認知の境界などを超えることを模索している。全ては、長い長い時の、境界のない連続性の上に危うく奇跡的に存在する。

目指すのは、各作品が影響し合いながら、調和している世界です。

── ボーダレスになっている世界観を作り出すために、一番苦労されたのは、どんなことでしょうか。

工藤: 当たり前の話ですが、作品を増やせば増やすほど、境界をなくせばなくすほど、美しい世界観を維持するのは難しくなっていきます。たとえば、庭を作ることを想像してください。岩を置いて、植物を配置し、池や小川を作り、虫などの生き物も入れるとします。この場合、庭の要素を増やせば増やすほど、それぞれがお互いに影響を与え合います。虫を入れれば、植物が枯れてしまうかもしれないし、外来種の虫が入ってきたことで元からいた虫が絶滅してしまうかもしれない。さまざまな交互の影響を考えて作らなければ、美しい庭はできません。

僕らが美しいと感じている「連続性あるアートの世界」も、一見秩序がないように見えても、各ピースがお互いに影響し合いながら、調和が成り立っている世界です。僕らはこれを「連続性が美しい世界」と呼んでいます。作品が増えるほどに、複雑に影響し合いますから、それらの関係性のすべてをコントロールしてボーダレスな美しい世界観を作り上げていくことが、最も難しい作業でしたね。

── 館内展示のあちこちを歩き回っている、蛙、動物、人などがとてもキュートで印象的でした。チームラボでは、これらのキャラクターを、ウォーキングフィギュア(Walking Figures)と呼んでいますね。彼らはどのように生まれたのでしょうか?

工藤: これらのキャラクターは投影面の壁を歩いてるので、鑑賞者からは、平面的なキャラクターに見えますが、裏側では三次元(3D)で彫刻のように作られています。3D上で作ってるので、立体物という意味でフィギュア(Figures)と呼んでいます。デジタルで物を作る場合は、すべて3D上で立体から作っていきます。

僕は、室内を歩き回っているウォーキングフィギュアのおじさんにも「お疲れさまです」って挨拶しますし、角を曲がるときにぶつかりそうになれば「あっ、すいません」って言います。おじさんに触れれば「よ~っ!」と、かけ声返ってきます。館内のスタッフは、ウォーキングフィギュアたちとは、そのくらいボーダレスに付き合っています(笑)。

館内を歩き回るキュートなウォーキングフィギュア(Walking Figure)たち。

── 来場者には、チームラボボーダレスのどんな世界を感じてほしいですか。またどのように体験してもらいたいですか?

工藤: ミュージアムの入口に書かれている言葉そのままですが、「境界のない一つの世界の中で、さまよい探索し発見する(Wandering, exploring, and discovering)」につきます。チームラボボーダレスの館内を歩く上で、何か回答や正解があるわけでもないし、地図があるわけでもありません。ゲームのように取説書もありません。来場者は、自分で感じて、探索して、何かを見つけていかなければなりません。それはまるで人生と同じです。この「境界なく連続するアートの世界」に、たくさんの人に没入していただきたいですね。

※後半のインタビューでは、チームラボが世界を目指す理由、工藤さんの東京散歩などのお話しが続きます。次のページをご覧ください!

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インタビューと文

Wakako

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大学で哲学の勉強をされた工藤さんは、少々難解なチームラボのアート哲学を、私にもわかるように、時には頭を抱えながら丁寧に説明してくれました。「三つ編みは、奥さんに編んでもらうの」「4歳と9歳の息子を連れてキャンプに行くのが楽しいね」と、ご家族の話をするときは満面の笑顔。やさしいパパの顔になりました。

写真&動画撮影

M.Suematsu

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写真(一部)

等々力 菜里
(とどりき さいり)

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