おさんぽブログ
天王洲の寺田倉庫「WHAT MUSEUM」が「Reborn-いのちを織りなすアーティストたち-」展を開催中。「自然との共生」と「いのちの行方」をテーマにした、6人の作家の作品に会いに行こう!
2025.5.12
寺田倉庫株式会社が運営する現代アートと建築のミュージアム「WHAT MUSEUM(ワットミュージアム)」では、2025年7月6日(日)まで「Reborn-いのちを織りなすアーティストたち-」展を開催中です。本展では、日本人が日々の暮らしの中で大切に継承してきた自然との深いかかわりに着目し、それを創作活動へ取り入れながら、「いのちの行方」について視覚的に提示する6人のアーティストによる約70点が展示されています。オープン前日のプレス内覧会では、6人自らによる作品解説ツアーが開催され、編集部も参加してきました。それぞれの作品の見所をご紹介しましょう。

展覧会場に会した6人のアーティスト。前列左から、水田典寿(みずた のりひさ)、鈴木初音(すずき はつね)、宮川達也(みやかわ たつや)、後列左から、玉田多紀(たまだ たき)、帆刈晴日(ほかり はるひ)、永沢碧衣(ながさわ あおい)。(作家名 敬称略)
独自の自然素材と向き合い対話して生まれた作品たち
6人の作家たちが大切にしているのは、自然の中で出会った素材です。それは、流木、古紙ダンボール、獣から得た膠(にかわ)、植物の種や茎などなど。彼らは、それらの素材やモチーフと真摯に向き合い、対話を重ねながら作品を生み出しています。
永沢碧衣:ハンターとして出会った生き物を絵画で記録
1994 年秋田県生まれ。主に東北の狩猟・マタギ文化に傾倒し、自らも狩猟免許を取得。アプローチの一つとして、山から授かった獣の素材を用いて膠や顔料を作り、それを絵画に用います。猟場に立つ度に、大いなる命の流れを認識し、生き物の生き様や背景をこの世に遺すために絵画として描写しています。地元の猟友会で初めて熊を解体した際の経験を元に描いた作品「解ける者」は、本展覧会のポスターとなっています。

自らの作品「流転」(2023)の解説をする永沢碧衣。

永沢碧衣「解ける者」(2021)。
玉田多紀:古紙ダンボールで希少種の生き物を造形
1983 年兵庫県生まれ。美大時代、油絵制作でスランプだったときに、偶然出会ったダンボールに魅せられ立体制作をスタート。以来、古紙ダンボールを巧みに用い、生き物の造形美や性質をユニークに捉えた立体作品を作り続けています。近年は、希少種をモチーフにした環境問題やジェンダーギャップの問題を生き物の視点でとらえた作品を制作。円台上に10体の動物がいる「絶滅危惧種の物語」は、どの角度から見ても動物と目が合います。

玉田多紀の作品。WHAT MUSEUM 展示風景「Reborn-いのちを織りなすアーティストたち-」展/Photo by Keizo KIOKU
水田典寿(みずた のりひさ):歩いて出会った海からの漂着物から創造
1977 年東京都生まれ。海からの漂着物や廃棄された家具などを用い、できるだけ手を加えず、素材本来の美を輝かせようとするアプローチで、新たな作品を創造しています。死んだ鹿が横たわっているように見える印象的な作品「夢」では、穏やかに眠る中「夢」を見るように朽ちていき次へつながっていくさまを、命の役割を終えた樹木の姿ともいえる流木を使用して表現したといいます。

水田典寿(みずた のりひさ)の作品。「扉」(2025)の向こうに、「夢」(2024)が見える。

水田典寿(みずた のりひさ)「デスク」「デスクランプ」「流木の本A/B/C」「蜘蛛」「デスクチェア」(2016-2025)
鈴木初音:種、茎、川砂、貝殻など自然の素材を使用
1995 年神奈川県生まれ。自ら育てた植物や天然由来の材料を用いた平面作品を制作。古より受け継がれた素材とその手仕事を追体験することで現代のものづくりの根源を追求しています。岐阜県下呂市の植物と川の砂を使用した作品や、広島の友人から譲り受けた貝殻を使用した作品が展示されています。

鈴木初音「川と山のあいだ 種まきに歩く人々」(2024)下呂市(南飛騨Art Discovery)

鈴木初音「花と貝と」(2022)佐藤美術館
帆刈晴日(ほかりはるひ):自分の日本画を短冊状に切って素材として使用
1990 年愛知県生まれ。日本画家。販売に至らなかった作品が手元に残ることへの葛藤が募る中で、自らが描いた絵画作品を解体し再構築し新たな造形に創りかえる創作を始めました。その行為は今までの美術の常識を覆したリサイクルするアートともいえます。「yarn -color wheel-」は、雨が降って、花が咲き、鳥が羽ばたく様子を広いスペースに造形した大作です。

帆刈晴日「yarn -color wheel-」(2025)

「yarn -color wheel-」の鳥。素材となった日本画の色と質感がよくわかる。
宮川達也:樹齢100年を超える老木から、新たな造形を誕生させる
1961 年岐阜県生まれ。伐採されたものの、腐食や極端な湾曲、洞があり、板材として使われなかった木々を用いて彫刻を制作します。いずれも樹齢100年を超え、森の中でひっそり生きてきた老木たち。それらを具象的な造形に変えるのではなく、生きてきた証を尊重しながらノミを振るい新たないのちへと導きます。30 年以上にわたり学校教育に携わりながら追求した宮川の造形経験はしなやかなやさしさと美しさをはらんでいます。

宮川達也の彫刻作品。WHAT MUSEUM 展示風景「Reborn-いのちを織りなすアーティストたち-」展/Photo by Keizo KIOKU
体験型展示スペースで、ダンボール作品と触れ合う
6人の作品を鑑賞した後には、1F・SPACE2の体験型展示スペースへ。ここには、玉田多紀による古紙ダンボールで作られた生き物が展示されていて、作品に触れたり、作品の一部となって写真を撮ったりすることができます。来場者がダンボールの鱗を貼っていくことで龍を完成させる「龍神の物語」や、ユニークな10体の動物のお尻が並ぶ「お尻の物語」など、大人も子供も楽しめる作品が満載。作品と一体になることで、ダンボールという素材の軽さや強靭さ、独特の質感を直に体験することができます。

玉田多紀の作品による体験型展示。WHAT MUSEUM 展示風景「Reborn-いのちを織りなすアーティストたち-」展/Photo by Keizo KIOKU

玉田多紀「龍神の物語」(2025)に、ダンボールの鱗を貼る。

玉田多紀「作家のたまご」(2018)では、たまごの中に入れる。
環境破壊や気候変動への危機感が高まる現在、自然と深くかかわりあって創作を行う6人の作品たちは、私たちに、これからの自然との向き合い方を改めて考え直させてくれそうです。会期も7月6日までと比較的長いので、ぜひ訪れてみてください。
「Reborn-いのちを織りなすアーティストたち-」展
会期 | 2025年4月26日~7月6日 |
---|---|
会場 | WHAT MUSEUM |
住所 | 東京都品川区東品川2-6-10寺田倉庫G号MAP |
交通 | 東京モノレール天王洲アイル駅より徒歩5分。東京臨海高速鉄道りんかい線天王洲アイル駅から徒歩4分 |
休業 | 月曜日(祝日の場合、翌火曜休館) |
入場料 | 一般1500円、大学生/専門学生800円、高校生以下無料、展覧会パスポート2500円(会期中何度でも入場可能) |
HP |
このお出かけの関連記事
![]() |
このブログのライター
Wakako |
---|
新着おさんぽブログ
[%title%]
[%article_date_notime_dot%] |
|
最新のお散歩コース
![]() |
鶴見線の旅&生麦旧道歩き/神奈川県横浜 |
---|---|
![]() |
虎ノ門ヒルズを歩く/東京 |
![]() |
渋谷・青山(青渋)を歩く/東京 |
![]() |
東京国立博物館を巡る/東京 |
![]() |
麻布台ヒルズを歩く/東京。 |
![]() |
渋沢栄一ゆかりの王子へ/東京。 |
![]() |
神田神保町古書店街を歩く/東京。 |
![]() |
乗り物で行く山下公園/神奈川県横浜。 |
![]() |
横浜中華街/神奈川県横浜。 |
![]() |
雑司が谷・護国寺/東京。 |
最新の連載記事
[%category%]
[%title%]
[%article_date_notime_dot%] |
|