日本のおみやげを訪ねて
Part5
手ぬぐい@染絵てぬぐいふじ屋(Somee Tenugui Fujiya)
2024.3.1
江戸の粋を伝える“染めの手ぬぐい”を求めて、浅草観音寺通りへ
さまざまな色柄に染められた木綿の手ぬぐいは、江戸時代から多用途の小布として重宝されてきました。江戸の庶民文化の一つ「てぬぐい合わせ(Tenugui Awase)」は、作家が考案した絵柄の手ぬぐいが一堂に会する催しで、今でいう品評会のようなもの。これをきっかけに絵柄の多彩なデザインが増えたといいます。今回は、創業1946年、オリジナルのデザインにこだわり、浅草で三代にわたって手ぬぐいを作り続ける「染絵てぬぐいふじ屋(Somee Tenugui Fujiya)」を訪ねました。
観光客で賑わう浅草観音通りを抜けて「染絵てぬぐいふじ屋(Somee Tenugui Fujiya)」へ
東京メトロ銀座線浅草駅の1番出口を出ると、そこが浅草観音通り。仲見世通りと並行してあるアーケードの商店街です。観音通り商店街を歩くこと数分。アーケードが途切れ、伝法院通を横切るとすぐ左手に「染絵てぬぐいふじ屋(Somee Tenugui Fujiya)」があります。
みやげ店や飲食店が軒を連ねる商店街。
商店街の賑わいが少し落ち着いた路地にある。
絵師三代から、型彫りや染めの職人へつなぐ老舗のこだわり
「染絵てぬぐいふじ屋(Somee Tenugui Fujiya)」の歴史は、江戸で売れっ子だった浮世絵師で戯曲者の山東京伝による「てぬぐい合わせ(Tenugui Awaise)」に魅せられた初代が、当時の復刻柄を手がけたことに始まります。以来、ふじ屋では、三代にわたってオリジナルの図案を描き下ろしています。図案を元に、型を彫る職人や、注染(ちゅうせん)染めという技法で仕上げる職人らの手を経て手ぬぐいが完成。一点一点職人が手染めで仕上げた手ぬぐいは表裏が同じように染まり、機械やプリントでは出せない味のある色合いが特徴です。店内には、季節の草花や歳時記、歌舞伎の図案などが描かれたものなどがずらりと並び、さながら「てぬぐい合わせ(Tenugui Awaise)」を見るようです。
右から3番目が「京伝てぬぐい」の復刻柄。ふじ屋を語るうえでは欠かせない1枚。
ペットボトルケースやハンチング帽、がま口など、手ぬぐいを活かしたアイテムも扱う。
手ぬぐいとは飾る、使う、包む、集める、四季を楽しむもの
手ぬぐいは文字通り、手をぬぐう(拭く)もの。水や汗を拭き取るハンカチやタオルとして使うイメージです。木綿の手ぬぐいは吸水性があって乾きやすく、切りっぱなしのほつれは雑菌が溜まりにくいという利点があります。使えば使うほどどんどん柔らかい風合いになる経過もまた味わい深いものです。三代目の川上正洋(まさひろ)さんは、「この拭くという用途意外にも、もっと自由な発想で手ぬぐいを楽しんでほしい」とも言っています。手ぬぐいは自由に使うもの、何に使ってもいいという考えは、創業当時からの思いです。「使ってよし、飾ってよし」。この言葉は、手ぬぐいを額装して鑑賞できる専用額を考案した先代によるものです。
三代目の川上正洋(まさひろ)さん。お店に立ち、自ら図案も描く。
幅35cm、長さ90〜110cmの小布に江戸っ子の粋を表現する
お店には定番のものから時候に沿ったものなど、常時70種ほどの手ぬぐいが揃います。外国人観光客には日本の風景や文化が描かれたデザインが人気。また、手ぬぐいの絵柄には一つひとつ意味があり、とくに古典柄は、語呂合わせや願担ぎ、願掛けなどを表したしたものも多く、日本人の遊び心や豊かな発想が表れています。たとえば、店先の暖簾は「いとし藤(ふじ)」という柄で、日本語の「い」の平仮名が縦に10個並び、その真ん中に「し」の平仮名を一筆描きしています。「い」の字が十個(とお)連なり、芯に「し」の字があって、「いとおしい」と読み、この柄を藤(ふじ)の花に見立てたものです。
こんな風に、手ぬぐいの絵柄からは、シャレや見立て(他のものになぞらえること)が好きな江戸っ子の粋を垣間見ることができます。その絵柄にどんな意味が込められているのかを知ることで、手ぬぐいの見方が変わってくるはずです。ぜひ、お気に入りの手ぬぐい選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。
「いとし藤(ふじ)」が描かれている店ののれん。
右から2番目の手ぬぐいが「いとし藤(ふじ)」。
レポーターSasamo’s おすすめ5選
結び文(むすびふみ)赤、青
結び文(むすびふみ)とは手紙のこと。現代の解釈ならラブレターのことで、縁結びなどの意味を持つ縁起柄。各1430円。
雪紋(ゆきもん)
多彩なスノーフレークが藍のぼかしに映える。雪は冬のイメージだが、涼感を誘う夏にもおすすめ。2200円。
おかめ
にこやかで親しみやすい笑顔で幸せの象徴として愛されてきた「おかめ」。多幸を呼び込む縁起柄。2530円。
めで鯛(たい)
枠からはみ出た大胆な構図は、額装することでさらに手ぬぐいの世界観を広げてくれる。お店を代表する作品のひとつ。2530円。
朝陽赤富士
多色で染めた雲海が鮮やか。「赤富士」は富士山が晩夏から初秋の早朝に朝日で赤く染められる現象で、縁起ものとして海外へのお土産にも人気。3330円。
染絵てぬぐいふじ屋(Tenugui Fujiya)
住所 | 東京都台東区浅草2-2-15MAP |
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電話 | 03-3841-2283 |
休業 | 木曜日 |
時間 | 11:00〜17:00 |
交通 | 東京メトロ銀座線・都営浅草線浅草駅から徒歩3分 |
HP |
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このみやげのレポーター
Sasamo |
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「手ぬぐい」って何?
古代、神祭具として扱われていた手ぬぐいは高貴な人のものでした。手ぬぐいが庶民の手に届くようになったのは木綿が普及した江戸時代の頃。以来、濡れた手や汗を拭くだけでなく、なにかを包んだり、頭に被ったりと、生活の必需品に。用途も多彩でポテンシャルの高い万能布です。
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写真
M.Suematsu |
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染め絵てぬぐいふじ屋
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